労務トラブルに対応した就業規則作成について
目次
■労使トラブル対応のための就業規則
就業規則を作成するにあたり、運用のし易いように会社の実態に合った作成支援いたします。とはいうものの、労使トラブルが完全に回避されるわけではありません。
そして、いざというときに会社を守るのも就業規則の内容によることが多くなっております。就業規則は絶対的なエビデンス(証拠書類)だからです。
そこで我々は労使トラブルの際に、会社のリスクを最大限軽減できるような対策を施した就業規則作成を行います。もちろん実態と乖離していては意味がないので、乖離のチェックおよび修正も伴走して行います。
■規程の重要性
昨今、以下にあるように様々な法改正が施行されております。その際に、法改正にあった規程があるかないかで、労務リスクに大きな影響を及ぼします。
直近3年での労務関連の法改正(就業規則対応がいるもの)
項目 | 内容 | 就業規則への記載 |
有給休暇の強制取得 | 年10日以上の有給休暇が発生する労働者を対象に、年5日有給取得させることを義務化 | 全企業 必須 |
残業時間の上限規制 | 年間720時間(特別条項の上限時間)、複数月平均80時間以内、1か月100時間未満に休日労働を含めた時間外労働を制限 | 全企業 必須 |
育児介護休業等の拡充 | 看護・介護休暇の時間単位取得、産後パパ育休、育休2分割取得、有期雇用者の除外要件の廃止 など | 全企業 必須 |
パワーハラスメント防止対応の義務化 | ハラスメント対応方針の周知、相談窓口の設置、相談があった際の適切な対応が義務化 | 全企業 必須 |
労働時間の適正な把握 | 管理監督者も含め、すべての人が客観的で適切な方法での時間管理実施 | 全企業 必須 |
月60時間超の割増賃金率引き上げ | 1か月の残業時間が60時間を超えた場合の割増賃金率を50%に引き上げ | 大企業)必須 中小企業)来年4月より必須 |
勤務間インターバル制度の導入促進 | 1日の勤務終了後、翌日の出社までに一定の休息時間を確保する仕組み | 制度導入する場合は必須 |
フレックスタイムの拡充 | 精算期間を1か月から3か月に拡充 | 制度導入する場合は必須 |
高度プロフェッショナル制度創設 | 高度専門職の高所得者に割増賃金の支払いを不要とし、自由な働き方ができるように | 制度導入する場合は必須 |
■就業規則・規程による労務リスクの事例
実際に規程が存在しない場合、上記のような法改正にどのような影響があるかの一例を記載します。
例:年次有給休暇の会社による時季指定
(規程が無い事のリスク)
有給休暇を5日取得していない社員に対する、会社の時季指定権の行使について、明確なルールが存在しない状況です。会社の時季指定に対して、社員が抵抗できる可能性が残されています。明確なルールを規程することで、時季指定権を適切に行使することが可能となります。
例:パワハラ・セクハラ・マタハラ&パタハラ防止に関する以下の規程
- ハラスメントの定義
- ハラスメントに該当し、禁止する行為
- ハラスメントの相談窓口
- ハラスメントの相談・行為があった場合の会社の対応
(規程が無い事のリスク)
パワハラ・セクハラ・マタハラ・パタハラの防止のために社員が遵守すべき事項が明確になっていません。
何が禁止される行為なのかを明確に示す事で、改めてハラスメント防止を社員に遵守させるとともに、万一発生した際、懲戒等の対応が適切に実施可能となります。
■近年注目される労務リスク
近年は労務関連訴訟も増加の一方を辿っております。そのような中就業規則の記載方法によりその結果が大幅に変わってしまう案件も増えており、以下のような部分の内容は要注意となります。
項目 | 内容 | 就業規則への記載 |
内定取り消し | 内定取り消しは、通常の解雇に準じた対応が必要 | 全企業 必須 |
試用期間からの 本採用拒否 | 本採用拒否は、通常の解雇に準じた対応が必要 | 全企業 必須 |
メンタル等での休職 | 断続的な欠勤・出勤するが満足に働けない等、通常の傷病とは異なる対応が必要 | 全企業 必須 |
不合理欠勤の退職 | 無断欠勤・音信不通ではなく、正当な理由がない欠勤が継続した場合の対応が必要 | 全企業 必須 |
勝手労働 | 会社が認めていない時間に勝手に労働し、賃金を請求してくる可能性 | 全企業 必須 |
SNS対応 | いわゆるバカッターや、勝手に社内情報をSNS等で発信されることへの対応が必要 | 全企業 必須 |
副業・兼業 | 労働時間は通算が必要なため、副業・兼業を把握していないと、賃金未払いの可能性がある | 全企業 必須 |
■就業規則・規程による労務リスクの事例②
例:内定取消事由
(規程が無い事のリスク)
内定取り消しを行い、その有効性について紛争となった場合、内定取り消しが認められず、賃金補償等が必要となる可能性が高くなります。
内定は、「始期付き解約権留保付きの雇用契約」が成立している状況です。
よって、内定取り消しは通常の「解雇」に準じた取り扱いをすべきであり、解雇同様に就業規則の定めが必要となります。
例:メンタル等での休職
(規程が無い事のリスク)
メンタル社員について休職にさせることができない、休職と復職を繰り返して就労実態がないまま雇用だけが継続する、といった状態が発生します。
メンタル疾患の特徴は、断続的な欠勤や出勤したが満足に働けない状況が発生する事です。また、一度復職しても再発の可能性が非常に高い事も特徴です。
よって、断続的な欠勤や出勤したが満足に働けない状況についても休職扱いにできるようにする事、再発した場合は前の休職と通算することが重要です。